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KEY PERSON

看護の質とワークライフバランスを両立する病棟マネジメント。

当院の呼吸器病棟では、常時12~15台の人工呼吸器が稼働しています。人工呼吸器離脱への取り組みに加え、クチタベ入院の患者さまもメインで受け入れている当病棟。そう聞くといかにも多忙そうに思われますが、有給休暇やリフレッシュ休暇の取得もできています。加えて、スタッフも楽しそう…。一体どのようにしてそんな職場が実現できるんでしょうか?

※診療報酬の区分上は障害者施設等一般病床。

渡辺明美師長(左から2番目)と3人の副主任たち。日々細やかに情報共有を行っています。

 

本館4階病棟

 

今回のインタビューでは、この二人にお話を聞きました!

病棟師長 渡辺 明美

副主任 黒川 あかね

 

プライベートを充実させられる職場です!

「忙しい病棟」のイメージがあるのですが…

渡辺 そう!よほど忙しいと思われているみたいで、産休から復帰したスタッフに配属がここだと伝えたら、「ええっ!」と微妙な反応を返されたという話も聞きました。身構えるようなこと、ないんですが!

連休が取れると評判ですね!

渡辺 そうなんです。有給はもちろん、リフレッシュ休暇も取得してもらってるし…

黒川 「師長、3連休なんてもらっても、何すればいいかわからないから大丈夫です!」って言うんですけど(笑)

渡辺 看護師ってなかなか連休が取れない環境で働いてきた人が多いから、そう思う人も多いんですが、せっかく取れるんだから取ってもらおうと。小さな子どものいるスタッフも多いから急な欠勤もあるんですが、そんなことはどうにかできるから、「気にせず休んで!」って言ってます!

頼もしい(笑)。一体どんな秘訣があるんですか?

渡辺 休みを取りやすくなったのは、看護方式が変わったこともあるんですが…。もともと当院の特徴として、子どもを持つお母さんスタッフが働きやすい環境はあります。いつもスタッフに言ってるんですよ。「あなたが休んでも仕事は逃げない。子どもにとってお母さんは一人しかいないんだから、必要な時にそばにいてあげて!これは業務命令よ」って。

お昼休み、本館4階病棟スタッフの皆さんに集まってもらいました。

 

スタッフ全員が担当患者を把握!

どの看護方式を導入したのですか?

渡辺 固定チームナーシング方式を導入しました。今、看護部ではより質の高い患者さま満足を実現できるよう業務改善に取り組んでいて、試験導入という形でやってみることになりました。60床の病棟なんですが、20床ずつを3チームに分かれて担当しています。

把握すべき患者さんの人数が3分の1になったんですね。

渡辺 60人の患者さんの情報を日々頭に入れて更新するのと、20人に同じことを行うのとでは、一人ひとりに関われる度合いが変わってきます。ずっと同じ患者さんを担当し続ける「固定」チームナーシングなので、患者さん・ご家族の背景、ご本人の志向、病状の経過、身体状況、さまざまな面で一人ひとりへの理解度が深まりました。「自分の患者さん」という意識も濃くなってきたと思います。記録にかかる時間は減り、アセスメントの質は高くなりました。そして、チームの全員が受け持つ患者さん全員のことを把握しています。そのおかげで休みが取れるんですよ。

具体的にはどんな体制を取っているんですか?

渡辺 各チームに1人ずつ副主任とチームリーダーを置き、日々の業務では全体を采配するリーダーを配置しています。チームリーダーはチーム内の業務の采配を、副主任はスムーズな運営のための調整やチーム間の連携などを行います。夜勤も必ず各チームから一人ずつ出てもらっています。普段看ている20人の方を夜も看るので、患者背景は把握しているし、何より1チームで一貫して担当することで責任ある看護が実現できました。全ての職種が集まるカンファレンスでは、各チームの代表が参加して情報共有を図るようにしています。

病棟全体がポジティブな雰囲気に

一日のスケジュールは変わりましたか?

渡辺 大きく変わりました!これまでは、必要な業務を漏れなく実施するために「この業務をこの時にやる!」という風にスケジュールを立てていました。でも、それは患者さん中心ではなかったんです。看護師のタイムスケジュールを廃止し、患者さんの生活に沿ったケアを行うやり方に変えました。患者さんの個別スケジュールを立てて生活サイクルをつくり、離床やリハビリを行います。個別プランは本当に患者さん一人ひとりの個別性を細やかに反映したものになっています。師長の私が言うのもナンですが、本当にすごいですよ!

食事やお風呂はどうしていますか?

渡辺 時間が決まっている業務は、チーム全員で行います。機能別のチームに分かれていると、担当業務以外の業務への関心や責任感が薄れてしまうんです。それを改善したいと思い、「みんなでやる」に変えました。その結果、業務負担の偏りがなくなり、不満が出なくなりました。いちばん良かったのは、「みんなで取り組もう!」というポジティブな雰囲気が生まれたことだと思います。

この看護方式がいろんな面で良い結果を生んでいるんですね。

黒川 看護方式を変えるって、並大抵ではなくて…。はじめは「こんなこと無理です」と何度泣いたことか(笑)。しかし、結果はいいことづくめでした。日々「今日は患者さんのために何をしよう?」と考えて、みんなで力を合わせてがんばれるし、仕事とプライベートのメリハリもついて、毎日が充実しています。

看護の質と姿勢も進化

クチタベや人工呼吸器離脱といった取り組みにはどういう影響がありましたか?

渡辺 患者さん一人ひとりへの理解が深まったおかげで、なぜこの患者さんにこのケアをしなければならないのかを理解してケアができるようになり、病棟全体としてミスも減りました。また、クチタベや人工呼吸器離脱は多角的・包括的なアプローチが必要なんですが、患者さんに深く関われるようになった分、アセスメントと患者さんやご家族との対話から得たことを活かした、より個別性の高いプランを立案、実施できています。

黒川 患者さんと接する中で「これに挑戦してみたい」と思ったときに、師長が「じゃあやってみたら?」と後押ししてくれるんです。先生に相談するときにはこういう根拠もあった方がいいよ、といったアドバイスや、橋渡しもしていただいています。

渡辺 しっかりと考えて作られた根拠あるプランなら、先生は「じゃあやってみよう」と言ってくださるから。

患者さんに必要なことを考えて実践できる度合いが高まったんですね。

渡辺 病棟で看護師のタイムスケジュールを廃止した代わりに、ルールを決めたんです。でも、こまごまとは決めませんでした。細かく決まっていると、なぜそうしなければならないかよりも、決められた通りにルールを守ることの方が重視されるという逆転現象が起きるから。それも後押しして、個々が自ら考えて実践する看護につながっているんじゃないかな。

黒川 本当によく観察して考えないと、「自分で考えて実践」はできないので、決して簡単ではありません。その代わり、「何のために看護師になったか」という原点を実感し、やりがいを感じながら仕事ができています。

渡辺 ケアワーカーさんも、「患者さんにしてあげたいことが山のようにあって、時間が足りない!」と言っています。病棟に自分で考えて動けるスタッフが増え、日々成長していっているな、と実感しています。

 

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