患者さまのQOLを回復させる、手のリハビリのスペシャリストに聞く。
院長をはじめ4名の脳神経外科医が在籍する桜十字病院の脳卒中リハビリセンター。ここには、脳卒中後のリハビリを要する患者さんが次々と入院して来られます。そんな脳卒中リハビリセンターで、上肢の麻痺という課題に取り組む上肢リハチーム発足の先駆けとして川平法を習得した作業療法士、泉さんと徳永さんに話を聞きました。
リハビリテーション部 作業療法士 泉 椋太
熊本駅前看護リハビリテーション学院出身
2016年入職。回復期病棟に配属、2年間経験を積み、2018年2月東京で中上級コース修了。その後療養病棟へ1年間転属し、回復期病棟で上肢リハビリに携わる。
リハビリテーション部 作業療法士 徳永 竜臣
熊本駅前看護リハビリテーション学院出身
2016年入職。入職後は療養病棟に配属。その後一般病棟を経て回復期へ。一般病棟配属時の2018年2月に東京で中上級コース修了。
※記事公開日時点
桜十字が上肢リハに力を入れる理由
上肢リハ(手のリハビリ)チームがスタートした経緯を教えてください。
泉 私たちの所属する脳卒中リハビリセンターには、後遺症として麻痺に苦しむ患者さんが大勢いらっしゃいます。麻痺は脳卒中後の後遺症としてよく表れる症状ですが、特に利き手が麻痺になると、QOLに大きな変化が起こってしまいます。働き盛りの方やまだまだ自分で生活する方の、脳卒中後の悩みを解決できる方法論や手技を、病院として確立できないかと上肢リハの強化に踏み切ったんです。
具体的にはどんな風に始まったんですか?
泉 回復期のドクターである川嵜先生が、「上肢リハを強化しよう」と、川平法やCI療法をスタートアップされたんですが、ちょうど私が担当していた患者さんに川平法が適応できそうだったので、「泉くん、勉強に行ってくるか」と。それで、まず川平法という反復促通療法を学びに霧島リハビリテーションセンター(現鹿児島大学病院リハビリテーションセンター)へ、次いで東京の川平先端ラボへ行きました。
徳永 その時に、新卒入社の同期だった泉から誘いを受けて、私も行くことにしました。一般病棟の担当で手のリハビリに関わる患者さんは少なかったんですが、回復期から退院された患者さんを外来リハで担当していたので、より患者さんの役に立てる治療の手段を知りたいと思いました。
泉 最初に学びに行ったとき、作業療法士になって3年目だったんです。その頃、リハビリを行うときに、自分の引き出しが足りないと痛感していました。患者さんにより良いリハビリを提供するための、何か武器になるものが欲しいと思っていて…。先生に声をかけていただいたのはそんなタイミングでした。
徳永さんに声をかけたのはなぜですか?
泉 ただ学ぶだけならば一人で十分なのかもしれないんですが、学んだことを患者さんに実践するという前提があったのが大きかったですね。自分だけの視点だと視野が狭くなってしまうこともあるし、疑問に思ったときに相談ができる相手が欲しくて(笑)。徳永とは病棟も違っていて、受け持っている患者さんの層も違うから、お互いに違う視点で学べると思ったんです。
今は二人とも回復期にいらっしゃるんですよね?
徳永 二人とも回復期病棟で上肢リハビリチームとして活動しています。上肢リハビリチームは作業療法士4人が所属していて、CI療法の担当、装具療法の担当がいて、私たちは川平法を担当しています。担当と言っても、担当分野をメインに学んで手技を他スタッフに展開する役割です。
強みは、「あきらめない」スタンス。
大切にしていることを教えてください。
泉 患者さんにとって、利き手が戻ってくるかどうかは切実な悩みなので、私たちセラピストも必死です! なので、私たちが何より大切にしているのは、「あきらめない」ということです。上肢訓練のラインナップを揃えているのも、そのためです。あらゆる手を尽くす前に「麻痺が残るのは仕方がない」と医療者に言われたら、患者さんは気持ちの置き所がないと思うんです。
「あきらめない」ためにしていることは?
泉 その方の最大限を見つけて引き出すように心がけています。退院後の生活状況を聞き取り、患者さんが今どんなことをどこまでできるかをしっかり見極めます。そのためには、多職種チームでの情報共有が大事です。手を尽くしても、必ずしも麻痺が軽くなったり、なくなったり、利き手が戻ってきたりするわけではないのがつらいところではあります。しかし、患者さんが「できることはやり尽くした」という実感を持てるほど充実したリハビリが提供できれば、次のステップを受け入れる準備にもなるのかなと思います。
そのための「フルラインナップ」なんですね。
徳永 そうなんです。当院の上肢リハでは、手先の機能や器用さを取り戻す川平法、麻痺のある側の手ができる活動を増やすCI療法、腕の運動を助けるロボットリハ機器ReoGo-Jと、腕から手にかけてのすべての範囲をカバーしています。さらに、装具療法や電気刺激療法、ボトックス治療を取り入れたことで、高いリハビリの成果が得られるのは、患者さんにとっても大きなプラスですね。
泉 特に治療効果を上げるために使用している電気刺激機器は、麻痺の残った手を治したいという切実なニーズに応えたいと、上層部にプレゼンを繰り返して少しずつ揃えていただきました。麻痺のリハビリで行うのは、神経経路の強化・回復です。川平法に神経や筋肉に直接働きかけることのできる電気刺激療法を組み合わせると、4倍の成果が得られたというエビデンスもあるんです。これだけ幅広く取り組めるラインナップは、当院の強みになっていると思います!
機器購入のプレゼンに作成された、気合の入った資料も見ました!
泉 いちばん最初は、「プレゼンなんてしたことない!」というところから始まって、初めて扱うパワーポイントで必死に資料をつくりました(笑)。どうプレゼンすれば院内の皆さんがいいと思ってくれるか、動画を見たりして話し方を研究しました。まず責任者ミーティングでのプレゼンを行うんですが、そこで先輩方がいろいろ質問をしてくださるんですよ。おかげで、資料に足りない要素もわかるし、機器への理解も深まります。それを受けて資料を改善して、医師や部門長、経営陣が集まる病院運営会議で時間をいただいてプレゼンします。
良いなと思うのは、部署でも病院全体でも、こういったプレゼンのチャンスをちゃんともらえることですね。現場の意見に耳を傾けてもらえるし、それがより良く伝わるためのサポートもしてもらっています。電気刺激療法の良さをいろんな人に知ってもらいたいです!!
徳永 そういうわけで、ことあるごとに方々で機器の良さをアピールしている泉は、まるでメーカーの営業さんみたいになってます(笑)。これも治療手技に必要な物を取り入れて、患者さんにより良い治療を、という純粋な気持ちからです…‼ 治療の技術も情報も日々更新されます。新しい機器やより良い運用方法を知るために、論文を読んだりラボや他の病院に見学に行ったりと、チームで勉強してアップデートし、患者さんにとってより良い条件でサポートができるように努めています。
上肢リハビリのやりがい
「やっててよかった」と感じたエピソードを教えてください。
泉 利き手に重度の麻痺を抱えて入院してきた患者さんのエピソードですね。この方に、川平法でリハビリを行い続けました。繰り返しになりますが、川平法は、麻痺のある手指に繰り返し刺激を与えることで、神経路の結合や強化を行い、動作の定着をはかるニューロリハビリです。いわば機能を鍛えるリハビリですね。根気強い反復が必要なのですが、患者さんも非常にがんばられて、実用手として回復して退院されました。これには私たちも自信がつきました!
お二人の目標を教えてください!
泉 上肢チームとしては2018年にスタートしたばかりの取り組みなので、まずは院内の皆さんに知ってもらいたいと思っています。クチタベや復職支援と並んで、桜十字の代名詞になるようがんばりたいと思います!! そのためには、桜十字のリハビリテーション部としてみんなが同じ治療をできるように、今後取り組みを広げていきたいと思っています。あと、しつこいかもしれませんが電気刺激療法を広めていきたいです(笑)。川平法はとても良い治療法だと思うのですが、それだけではカバーできないこともあります。自分のカバーできていないところを埋めるため、学び続けていきたいと思います。
徳永 チームという環境に身を置いていると、自分一人ではたどり着けなかったようなことに導かれると感じます。チームから得た学びをもとに、個人の状況に合わせた広い視野で見られる知識を身につけていきたいですね。退院に向けて多職種で進めていくので、広い視点で患者さんに関われるのは本当に勉強になります。患者さんにはそれぞれその背景があり、個性があり、やりたいことがあります。その人らしさを活かせるリハビリ・支援を提供したいと思います。
おまけ
冒頭のポートレートを撮ろうと、カメラを向けた瞬間。※途中じゃなくて、一発目です
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募集要項
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